―――『おやすみモンスター』は1年8ヵ月ぶりのアルバムですね。
中澤 そうなりますね。
―――ベスト盤が出たり、武道館公演があったり、いろいろあったので、そんなに間が空いた印象はないですが。
中澤 ああ。休みがなかったですからね。ツアーがあったし。リリースも、シングルだけどしてたし。アルバムはすごく久々ですよね。
―――制作はかなり前から?
中澤 ベスト盤を出して、武道館をやってというところで、バンド的にも気持ち的にも区切りが付いたみたいな話は、シングルのときに言ってたと思うんですけど。でも、そこから何か作品を作るにあたり、曲はコンスタントに作っていこうと。別にそこで休むとかではなくて。「次はどうしようかみたいな感じで、シングルのときにもさんざん言った、例の合宿に行ったりとか。だからアルバムに向かってのスタートの段階は、ぼんやりとしていて…。
―――なんとなく見えつつ、制作していこうと?
中澤 見えつつ…いや、見えてなかったです(笑)。
河野 アルバム用とか、シングル用とかではなくて、とりあえず曲ができた順に録っていこうというスタンスで。曲出し合宿みたいな。とにかくいっぱいセッションしようよというノリの合宿でしたね。昨年の合宿は。
―――そのセッションから生まれた曲もあり、バンドの音を鳴らす楽しさが蘇ったという話をされていましたよね。
河野 そうですね。今年の初夏にも合宿に行ったんですけど、それは意味合いが全然違って。メインは昨年の秋から今年にかけて作った曲というのが、今回のアルバムなんですけど。初期の段階でできた曲というのは、ちょっと明る過ぎたりして。このアルバムには入らなかったんですよね。
―――お蔵入りなんですか?
中澤 うーん。ひそかに見送り、みたいな。1年8ヵ月も空いてるから、最初の頃にできた曲と最後の方にできた曲って、バンドのマインドも全然違うから。それをパッケージにするときに、どうしても今の気分にはそぐわないものもあったりして。
―――最初の合宿と後半の合宿では、気持ちにどのような違いがあったんですか?
河野 そうですね…。いつもどおりの感じで「何も考えずやろうよ」ってやってたのが、昨年の最初の方の合宿で。でも、アルバムを制作していくにつれて、意味を考え始めましたね。「なんで5人でやってんだっけ?」と。ただ楽しいということだけじゃなくて、もっと作りあげなきゃいけないものがあるんじゃないかっていう意識して、自分たちが発信しなきゃいけないものがあるだろうっていうことでしたね。
―――そういう疑問はこれまでもメンバーの心に少しはあったんですか?
河野 制作していくなかで徐々にありましたね。
中澤 みんな似たような感じで。第1回の合宿は、遊びに行くみたいな感じだったし。バンドの健康診断じゃないけど。やっぱり曲もできるし。「あ、いいじゃん、いいじゃん」みたいな、ノリを確認して終わったみたいな合宿だったし。それから第2回の合宿に入るまで、東京に戻ってレコーディングをしたりとか、曲を作っていったりするなかで「そういえばどこに向かってるんだ?」みたいな。俺たち、どういうアルバムを作ろうとしてるんだというところを置き去りにし過ぎてるなと。曲はできていくんだけど。今、丈さんが言ったみたいに、意味みたいなものを求め始めて。それと並行してツアーも始まったんですけど、ツアー・スタッフが今回から変わったこともあって、そこでバンドとして今までのやり方では通用しないところも多々出てきたり。同時にバンドとしてのスキルも見つめ直す時期と重なったりして。自分たちのことをあれこれもう1回見つめ直す時期が到来したんですよね。そういう時期に、第2回の合宿をやろうぜってことになって。そのときは、いわゆる合宿と呼ぶにふさわしい合宿で。目的を持ってたし、山奥に行ったし。もうここで曲をこれだけ作って、とか。まだツアー中だったんで、例えば午前中はバンドのスキルアップってことで、練習しようみたいな。素生抜きで練習して、素生はその間曲を作って。で、午後からみんなで曲作りして。
河野 9時起きだったもんね。
中澤 そう、9時起きで、みんなで朝ごはん食べて。その合宿所で食事が出るんですけど。で、10時ぐらいから。本当に合宿ですよね。第1回目の合宿っていうのが、おこがましいぐらいの。部活な感じで。
―――前回とは違って、疑問をぶつけたうえでの曲作りだったんですね。
河野 そういう曲もありましたね。僕の場合はアルバムに入っている『愛のうた』という曲だったし、素生の場合はシングル『さかさまワールド』ですね。そのへんは濃いですよね。どれだけ本当の自分の姿をさらけ出せるかっていうところです。バンド内のコミュニケーションというか、ずっと一緒にやってきた仲間で、歳も同じで、「言わなくても分かってるだろ」みたいなところで物事を進めてきたときもあったんですけど。それってよくないなって。何もいいものが生まれないなっていうことにみんな気付いて。何を歌うかっていうことにも関わってくると思うんですよね。アルバムを作っていくなかで、アルバムをリードするような、すごく強い曲がほしいねって話になって。5人で集まって「じゃあ、どういうメッセージなんだろう?」って話し合ったりしたんですけど。そのなかで僕は、もっと素生に吐き出してほしかったんですよね。例えば『胸いっぱい』も、僕はいい曲だと思うんだけど、言ってることが広過ぎて、ダイレクトには響いてこないな、というのが僕の正直なところで。もうちょっと裸でぶつかってくるみたいな、それは僕の言い方で「魂を見せろ」って言ったんですけど、「おまえ、もうちょっとソウル見せろよな」って。僕の『愛のうた』は、ほとんど実体験だから。そういうの引き合いに出して、素生のことを刺激したり。その結果、弾丸みたいな強い曲になったと思います。バンドの演奏も、新しいものが生まれたし。
―――どこまで自分をさらけ出すかは難しいですよね。傷付くだけで終わってもいけないし。
河野 そうなんですよね。ただ何でもしゃべればいいってことでもなくて。そういうところにこそ、宿るエネルギーってもんがあるはずで。僕が言ってるのは、そういうふうに力を出せよってことなんですけど。
―――「魂を見せろ」か…。歳を取って、ちょっとしたことでは感動しなくなったり、慣れてしまったりすることが、アーティストにとっては危険なんでしょうか。
河野 そうですね。慣れちゃうというのが、陥りがちなところで。
中澤 GOINGもそれに片足を突っ込み始めてて、そういうタイミングで気付けたというか。「あぶない、あぶない」みたいな。このままではいかん、いかんと。素生の曲の書き方ひとつでも、今思えばですけど、デビューして6年で認知されるようにもなって、世間が持ってるGOINGのイメージとかに、勝手にこっちから合わせにいってんじゃないのというジレンマがあったり。ちっちゃい枠の中に収まって、そこでやってんじゃないの、みたいなツッコミがあったり。
―――確かにファンが持つGOING像がおぼろげながらもありますが、バンドが変わっていくのも当然ですしね。
中澤 『さかさまワールド』を作ることになって、5人で集まったときに、曲の話ももちろんだけど、それ以外にバンドのことだったり、自分たちのこともああだこうだと話して、結果『さかさまワールド』という曲を素生が書いてきたんですけど。久々にみんで作ろうと思って曲を作ったという感覚で。久々というか、初めてなのかもしれない、というぐらいの。今までは、丈さんなり素生なりが、自分の個人的なところから生まれてきたものを持ってきて、「こんな曲できたぜ」って。で「いいね、いいね」ってやってたんですよ。5人で一からこういう曲作ろうとか、今はこういう曲を鳴らそうとか、お互いちゃんと言葉に出して、しゃべって、それを踏まえたうえで素生が書いてきたものが、5人で話したこととズレがなかったんですよ。コミュニケーションって大事だねっていうところで。
―――言わなくても分かってると思ってたことを改めて言うことで、変わってきたんですね。夫婦みたいですね。
中澤 そうそう。熟年夫婦みたいなね。ちゃんと「愛してるよ」って言ってあげないと、みたいな。でもそれのまだ第一歩かな。立ち返ったみたいな表現をするとしたら。これで全部解決したというよりは、その一歩を踏み出せたかなっていう。
―――岐路ということですね。
中澤 ロード第2章ですね(笑)。ここから、またおもしろくなると思いましたもん。バンドやってんのが。
―――洋一さんとかは、どんな意見を?
河野 あの人もソウルな人だから。どっちかというと。「メッセージだよな」みたいなことはしきりに。
中澤 ああ、言ってた言ってた。
河野 曲調とかじゃなくて、何を言うかだよ、言葉だよとは言ってましたね。
―――石原さんは?
河野 石原さん、何か言ってたっけ。
中澤 何かいいこと言った気がするんだよ(笑)。
―――(笑)。じゃあ、みんなの意見を聞いた素生さんは?
河野 その場では「よく分かんない」みたいなことは言ってましたけどね。多分、素生も歌詞を書いて、言葉にしていくなかではっきりしていったんだと思うんですけど。でも歌詞書くのも、そんなに時間かかんなかったって言ってましたけどね。深夜にファミレス行って、ノート開いてみたら、結構すぐできたんだよなとか言ってた。
中澤 みんなが結構言いたい放題だったから…。
―――幼なじみの仲よしバンドで平和そうなイメージがある半面、最近のライブを見ていてもやもやした部分があるのかなと見受けられたりもしてたのですが。
中澤 GOING って、自分らが思ってる以上に平和なムードだったり、わりといいとこの子みたいなバンドに見られたりしてるのが、びっくりして。でも結局それは、自分らの発信すべきことが伝わりきってないという結論になって。
―――重たくないのもバンドの特長としてありだとも思いますが、GOINGにも悩みはあるんですね。来年、30歳ですしね(笑)。
中澤 それにしちゃ全然さわやかじゃないですか(笑)。なまじ「青春」とか「胸キュン」とかいうキーワードで世の中に「はじめまして」しちゃったところがあって、それだけで見られてるジレンマもありつつ。ライブではその反動みたいなところで、「それだけじゃないぜ」という反動のパワーがあったりするんだけど。それをここ最近、作品でそれがやりきれてなかったかもしれない。
―――でも年相応の青春を歌っていてほしいですね。35、40歳となっても。
中澤 年齢的にも、そういう時期なんでしょうね。30手前の。そろそろ「男の子」でもなくなるみたいな。
―――その思い入れの強いアルバムを引っさげてのツアーも始まりますね。今年、岡山は2回目ですね。
中澤 ママキンが2回目だしね。次回は対バンで。the pillowsとなんです。
―――the pillowsのトリビュート・アルバムに参加されてましたし、GOINGにはthe pillowsの曲をやってもらいたいですね。
中澤 なるほどね。忘れてました、そういうやり方もあるの。せっかくthe pillowsとできるならね。
―――ツアーはワンマンとダブルスとがありますが、バランスがとりにくいことはないんですか?
中澤 むしろ楽しみだよね。呼ばれることは、今までに何回もあって、誰それのゲストとか、対バンで何かやりましょうとか。でも自分ら発信で、自分らがやりたいバンド誘って、ツアー組んでってのは初めてなので。
―――対バンの選考はメンバーの意見なんですか?
河野 そうです。メンバーの意見です。
中澤 全体的に男くさいですよね。結果的に。でも、絶対楽しくするのでぜひ来てください。