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【ブログ】HELLO MOVIES

2010.01.26

『おとうと』平松恵美子さんにインタビュー!

山田洋次監督の最新作『おとうと』。主演に、吉永小百合・笑福亭鶴瓶を据えた話題作。その脚本・助監督を務めた平松恵美子さんは、岡山県倉敷市出身。キャンペーンで地元に帰ってきた彼女に、『おとうと』の感想をぶつけてみました。

miramatsu

---この作品には、日本文化の「当たり前」が、すごく美しく描かれてるなと感じました。例えば、娘が嫁ぐ日の描写とか、セリフの日本語の美しさとか。

 これは、山田洋次監督の持っている体質みたいなものじゃないかなと思いますね。嫁ぐ日のシーンは、山田作品には昔からあるんですよね。『釣りバカ日誌』とかにも。こういった場面は好きなんでしょうね。好きだし、> 大切にしていくべきことだと思ってらっしゃると思います。

---この作品は、これまでにリメイクされていますが、本作はオリジナルのストーリーで、原作からかなり自由な形で作られています。

 オリジナルは思春期ならではのじゃれあいが多いんですね。家族の中で放置された孤独を慰めあうようなじゃれあい。それを50歳、60歳になってやったらおかしいじゃないですか。だから、極自然に「(姉弟のやりとりが)そうなっていった」という話にしたかったんです。

ただ、どうしても「リボンで2人の腕をつなぐシーン(※1)は、やりたかったんですよ。姉弟の最後の絆をリボンで表現したかった。リボンの色にもこだわったりしたんですよ。いろんなピンクの色でカメラテストして、最終的にあの色になりました。

---この作品を今、公開することに意味があるのかなぁと。そういう観点では、「看取り」や「ターミナルケア」といった現代的な問題に触れつつ描いているところが、「今」の部分かなと思うのですが。

 劇中の「みどりのいえ」(弟が看取られるケアアウス)には、「きぼうのいえ」っていうモデルがあるんです。その施設を発見したということが、この『おとうと』を現代のドラマにできた鍵だったなと思います。あそこの人たちは、「ひたすら見送る」人たちですからね…。

脚本を書く直前くらいに、「きぼうのいえ」に出会ったんです。それを機に、監督とも「看取り」についてたくさん話し合いましたね。、「きぼうのいえ」には、私たちも何度もお邪魔しましたし、吉永さんと鶴瓶さんにも足を運んでいただきました。

---劇中、吉永さんと蒼井さんが抱擁するシーンがあります。日本人の場合、こういう場面にどこか気恥ずかしいというか不自然な感じが否めないのですが、本作では、それまでの世界観に引き込まれているので、すごく当然な行為のように感じられました。

 あのシーンの前に、2人がそれぞれ違う経験をしているんです。母親の吟子(吉永小百合)は、弟に「お姉ちゃんところで死ぬんやない」と言われてショックだったと思うんです。さらに、まったく知らなかった弟の大阪での暮らしを目撃してきて…。それを、娘の小春(蒼井優)の前では押し殺している。また、吟子は薬剤師という設定なので、どこか理性的なキャラクターがある。一方、娘の小春は、亨(加瀬亮)に告白されて「私、もう一度やり直せるんだ」という喜びを感じている。そういう別々の体験をした2人だからこそ生まれる感情の高揚が、あの抱擁を自然なものにしているんじゃないかなと思います。

私も個人的には、日本人で抱きあうのは好きじゃないんですよ(笑)。でもあそこは珍しく、脚本を書く段階で山田さんに「抱きしめてあげたらどうですか?」と言いましたね。

---亨(加瀬)の告白シーンは、グッときました。

 あのシーンは、山田さんの演出力ですよね。あんなふうに、こぶしを上げて「やったー」って言わせるなんて、なかなか発想できませんよ。ああいった演出を見せられると、「あぁ、やられたぁ」って思いますよね。

---最後、弟の鉄郎(鶴瓶)を嫌っていたはずの祖母のセリフで、家族の絆の強さがズシンと伝わってきました。ラストは、最初から決めていたんですか?

 いやいや、あそこに「たどり着いた」って感じですね。実は最初は違うセリフだったんです。現場を重ねながら生まれてきたシーン、そこに落ち着いたシーンですね。

---作品全体が、自然の流れで紡がれているという印象を受けます。

 それは、山田組だからだと思いますよ。スケジュールがゆったりしてるんですよ。考える時間があるんです。あと、山田組はラッシュ(※2)をよく観るんです。「このシーンはどうだろう」と立ち止まる時間がある。こういう余裕のある現場は、今あまりないですからね。まぁ、これが当たり前で、「あるべき姿」だと思うんですけどね。

---これから観る方に、メッセージを。

 そうですね。吟子と鉄郎の仲や、小春と亨の間もそうなんですが、「やり直すのに、タイムリミットはない」ということが、この映画の隠れたメッセージじゃないかな。

また、この映画は「行間の映画」だなと思っています。鶴瓶さんは、実は数えるほどしか出てきてないじゃないですか。その行間を「味わって」「想像して」くれると、もっといろんなことを感じてもらえる映画になっていると思います。



※1 「リボンで2人の腕をつなぐシーン」/市川崑監督作品の『おとうと』で、重要なシーン。過去のリメイク作品でも、このシーンは再現されている。

※2 ラッシュ/未編集の下見用フィルム

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