<横浜聡子 PROFILE>
1978年生まれ、青森県出身。横浜の大学を卒業後、東京で1年OLをするも、「映画を撮りたい」と映画美学校第6期フィクションコース初等科に入学。卒業制作の『ちえみちゃんとこっくんぱっちょ』(06)が、第2回CO2オープンコンペ部門最優秀賞受賞。本作は、その助成金で制作された。

インディーズから劇場公開へと、異例の運びをたどった作品。あらゆる不幸を背負った少女が、パワフルに疾走するさまを描く。監督は、本作が劇場初公開作となる横浜聡子。強烈なインパクトを放つヒロインには、期待の新人・野嵜好美を起用。また、監督が某大学でスカウトしたというドイツ人留学生ペーター・ハイマンや、漫画家のひさうちみちおなど、個性的なキャラクターが脇を固める。生きることを真っ向から肯定する、力に満ち溢れた異色作。
映画化作品も、確かにおもしろい。おもしろいけど、映画ファンとしては、やっぱりオリジナル作品に頑張ってほしい! ってことで、実に興味深いオリジナル作品を見っけてしまったので、大胆ピックアップ! 街の「映画好き人」たちで、よってたかってインタビューしてみました。横浜監督、オリジナル作品の醍醐味ってなんですかー!?
| <インタビュアー>
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それで、自分がそれまでに観た自主映画とはまったく違うことをしてみたいなと考えたんです。まず、「トラウマに立ち止まらない強い主人公の映画が撮りたい」と思ったんですよね。 茅野確かに、今までにない作品でしたよね。 本堂この作品って、主人公・よし子のインパクトが強いんですけど、それだけじゃないって感じがしたんですよね。それは、監督の意図なんですか? それとも、役者が好き勝手やって、こうなったって感じ? 横浜この主人公のよし子は、すごいキャラクターだって、よく言われるんですけど、自分としては、特に奇をてらって描こうとは思ってなかったんです。それより、「自分と違う他人の存在を認める」というか「他人を拒否しないで一緒にいるってこと」って、どういうことなんだろうということを、すごいやってみたくて。それは、自分の中のルールとして、この映画の登場人物は「他人の存在は否定しないんだ」というのを貫いて脚本を書きあげました。 茅野よし子が一番おかしく見えるけど、よく見ると、出てくる人、全員おかしいですよね。 横浜はい、全員おかしいんですね。例えば、「くみとり屋の小川」も年齢的には大人なんですけど、変ですよね。よし子がひとりで住んでる家の前にあるくみとりのマンホールって、今はもうほとんどないものじゃないですか。それが、社会からはみ出たような印象があったんです。それを仕事にしている小川も、社会からちょっと離れたところにいる人って感じ。 茅野「僕も家族を抱えてるんだよ」って言いながら、実は養われてたっていう。 横浜家族っていっても、自分の親だったっていう。 横浜そんなふうに社会からはずれてるんですけど、それを別に悲しんだり悩んだししてない、「いいバカ 」ですね。それは、よし子も。 安井よし子の役は、どうやってかためていったんですか? 横浜そうですね。よし子こを演出していくのが一番難しくて。奇をてらって描いていないとはいえ、実際、よし子の言動を生身の人間が演じると、すごく変なんですよ。マンガのキャラクターっていうか、リアリティのない感じになってしまうっていうか。よし子に関しては、撮影前から、自分の中の「よし子のイメージ」が強過ぎて…。 実際に野﨑さんに演じてもらったときに、自分のイメージと違うんですよ。その差を埋める方法が、なかなか見つからなくて。どうやって、野﨑さんのよし子を受け入れるか、悩みましたね。 安井キャラクターが強過ぎると、それを役者が消化するまで時間がかかりますよね。 横浜そうですね。今回、現場で最初、主演の野﨑さんに、「~しないで」「~しないで」って言うばっかりしてたんですよ。禁止令をいっぱい出して。野﨑さんは、彼女なりによし子を考えてて、セリフを言ったあとにニヤッと笑ったりしてたんですけど、「そこ、笑わないで」っていうようなことばっかり言っちゃってて。そしたら、彼女の中のよし子が、キューッて狭くなっちゃったんですよ。「あ、これはいけない」って、「野﨑さんのよし子を信じよう」と。後半は、彼女のよし子が、段々受け入れられるようになってきましたね。 白川よし子を見てたら、「すごい、さっこ(横浜)っぽいな」って思う部分と、さっこが「こういうふうに振る舞いたい」って思う部分とあって。音楽のオーディションを受けたりするところは、さっこっぽいなとか。 本堂オーディションとか、受けてたんだ。 白川そうなんですよ。ジャージとか着てたり、ぶっきらぼうなところとかもさっこっぽい。年賀状も、ものすごい殴り書きで届くんですよ。それが、よし子のノートの書き方にカブるところもある。でも、「出したいけど出せない」部分も見えて。さっこにとってよし子は、「さっこであり、憧れの女性像」なのかなぁと。 横浜ほんと、そのとおり。全部言っちゃった(笑)。 白川あ、ごめん(笑)。 横浜私のことをよく知ってる人は、シナリオを読んだ時点で、「よし子は、よこちん(横浜)だよね」と言われるんですけど、私のことを知らない人は、「よし子=監督」とは思わないみたい。でも、自分としては、同じ女だし、どうしても自分が投影されちゃうんですよね。前の作品(『ちえみちゃんとこっくんぱっちょ』)の主人公は、よし子とは全然違って無口で、ただ淡々としている女なんですけど、それも、ある意味、自分が投影されているところはありますね。 本堂僕は、うっすら「監督かなぁ」と思ってました。 茅野それ、私も感じました。小説やマンガなどの「映画化作品」と比べて、オリジナル作品って、作り手のパーソナルな視点が出てきやすいんじゃないかと思うんです。それが強い分、観る側も、作品の中に自分を重ねて観やすいんじゃないかなと。 で、私は、よし子が「ゴリラーマン」と呼ばれているところにひっかかった。ドイツ人に歌をほめられたときのよし子の無垢な笑顔を見たとき、「ぶさいくの輝きは無敵だ!」と感じました。 本堂すごいとこ観てますねぇ。僕は、切れたブレーキの線とかが気になりました。 横浜そっちのほうが、よく見てるじゃないですか(笑)。
横浜ひと言では説明できないですよね。 本堂人のトラウマで曲を作るって行為とか、説明しにくいですよ。しかも、縦笛で作曲じゃないですか(笑)。 安井僕も気になりました。なんで、縦笛にしたんですか? 横浜シナリオを書く前は、よし子が音楽教室をやっているということは決まってたんだけど、何の教室かは決めてなかったんですよ。「ピアノかなー、歌かなー」と考えてたときに、「笛」が出てきたんですよ。あとから考えたら、「暗いトラウマを、笛の明るい音色に変えちゃうことで、まったく別のもにしたかったのかなぁ」と思うんでけど。最初は思いつきだったんです。部屋から縦笛が出てきて、その吹き口の部分が黒くなってたんです。それを見て、「よし子は、吹き口の黒い縦笛を持ってるはずだ」と思って。「縦笛1本で生きている」感じがすごいはまったんですよね。 白川私も音楽が好きなんですけど、「音楽教室でギターを習った」っていう人よりも、「譜面が読めなくっても曲は作れる」って人のほうがかっこいいなって思う。だから、縦笛で曲を作るっていうのもいいなって。こじつけっぽいかもしれないけど、さっこの「枠にはまらない」映画の作り方もそうなんじゃないのかなって思った。私は、さっこはてっきりミュージシャンになりたいんだと思ってた(笑)。 ※白川は、過去に、横浜監督と2人でバンドを組んで、カーペンターズを歌っていた。 横浜ねー、歌手になりたかったんだけど(笑)。もともと、根っから映画をやる人じゃないのかもしれない。映画をたくさん観て、本当に毎日映画のことを考えてる人っているんですよね。そういうタイプではないかも。久美(白川)が言うとおり、「習ってないけど、曲作っちゃえ」みたいな感じで、感覚的に楽しくて、今、映画をやってるところが大きいですね。 安井感覚的なところで表現したいというところは共感します。僕は、どっちかっていうとガチガチに映画を勉強してきたタイプなんで(笑)。だから、うらやましいです、横浜監督みたいな作り方。自分のときは、「積み重ねてきたものを、ぶつけるんだ!」って感じでやってきてたんで。作品のスタイルが違うんだと思うんですけど、うらやましい。 白川でもきっと、さっこも、安井さんのことがうらやましいと思いますよ。 横浜そうそう、それ言おうとしたの。私、めんどくさいこと、どうでもいい!って思っちゃうから(笑)。 茅野私がこの作品で気になったのは、セリフのおもしろさ。あれは、脚本の時点で書かれてたんですか? それとも、現場で生まれたものなんですか? 横浜脚本にありましたね。いつも、思いついたことはその場でメモするようにしてるんですよ。友だちが言ったひと言とか、ぱっと思いついたセリフの断片をネタ帳に書いてて。で、「このセリフを登場人物に言わせたい」「どうやったら言ってくれるか」って、セリフのために話を作ったりしてるところはありますね。 茅野私たちの企画でもあります。「この1ページを作るためには、どういう特集を組めばいいか」って考えることありますよ。 横浜あぁ、似てるかもしれませんね。 茅野一番おもしろかったのは、「よし子さんののどの奥には、小さな黒人が住んでいるね」っていうドイツ人のセリフ。最高でした。あの発想は、いったいどこから? 横浜あれはですねぇ(笑)。私、高校時代からトータス松本が好きなんですよ。彼が何年か前にソウルアルバムを作ったときに、黒人の女性と一緒にレコーディングしてて、「あなたは、のどの奥に小さな黒人がいる」って言われたそうなんです。ファンの間では、有名なエピソードなんですけどね。「すごくいい!」と思って、いただきました。 茅野あの空気で、あのタイミングで言われたら、最高の賛辞ですよね。 横浜使い方がよければ、すべてよしです。 安井僕が好きなシーンは、よし子が寝転んでて、その周りで子どもたちが壁に落書きしたりして遊んでる幻想的なところ。あそこ、めちゃくちゃうまいなぁって。観てるほうも、徐々に気が狂ってくるっていうか。 本堂倒錯的な感じがしたよね。 横浜私もあそこは、個人的に好きなシーンです。 安井あのシーンは、子どもたちに自由にやらせたんですか? 横浜自由にやらせましたね。 茅野よし子が公園で「滅亡じゃ!」って叫ぶシーンのダイナミズムもすごかった。 横浜あそこのシーンは、毎日悩んでたんですよ。予定では、「滅亡じゃ」のところで、直立不動ででっかい声で叫んでるっていうイメージがあったんですけど、実際に撮影現場の公園を見てみたら、自分が考えてた演出では、よし子が引き立たなかったんですよ。それであんなことに(笑)。 茅野あの動きは、監督ご自身がやってみせたんですか? 横浜あそこは…やってみせましたね。 白川おぉー! 茅野間とかスピード感とかセリフとか、「すべてがそろった!」って感じでした。 横浜ありがとうございます。 茅野四つ葉のクローバーを摘んでる子どもとよし子のシーンも、ツボでした。最初は、摘んでる子どもに「ダセッ」って言ってるのに、数カットあとには、「あんまり取るなよ、なくなっちゃうだろ」って心配してるっていう。 横浜よし子が、ちょっと弱ったあとにね(笑)。その都度その都度、そのとき思ったことを言っちゃうのがよし子なんですよね。 白川そういうキツいことでも、なんで、よし子が言うと、人を傷つけないんだろう? 横浜悪意がないからじゃない? 子どもみたいだからじゃない? 安井音は、『音遊びの会』の音楽を使われたとか。 横浜そうですね。「音は、どうしようか」って、編集しながら思ってて。「とりあえず、タワレコ行くか」みたいな(笑)。イメージかためるために、視聴しようと思って。 本堂タワレコを選んでいただき、ありがとうございます(笑)。何にピンときたんですか? 横浜そのCDに「子どもが演奏してます」っていう紹介文があったんですよ。そのとき、子どもっていうのにすごく敏感になってて。聴いてみたら、いろんな楽器が鳴ってて、声すら音楽に聴こえて。 本堂それ、「オススメCD」で、うちの店でレコメンしていいですか? 横浜ぜひ(笑)。 安井この映画で、「このカットは、最高の画が撮れた!」って瞬間ありましたか? 横浜それが、撮ってる現場ではなかったんですけど、よし子がマンホールに落ちるシーンは編集しててグッときましたね。撮影中は、目の前のことしか見えてなくて、編集になってやっと冷静に作品を見えるようになったって感じでした。 茅野編集作業って、やっぱり大切な過程なんですよね。 横浜映画って、撮影やったら終わりってイメージあるかもしれないけど、「シナリオ」「撮影」「編集」って、全部違う作業で、その都度、全部映画を作っていく感じなんです。今回は特に、撮影が終わって「私、一体、何を撮ってきたんだっけ?」ってなったんですよ。だから、編集で、「この映画を、新しく作っていこう」としてましたね。 茅野この映画のレコメン・コメントをされている黒沢清監督が、ずいぶん前にテレビ番組で、「僕は、編集に入ったら独裁者になります」って言われてたのが、すごい強烈だったんですよ。 横浜それ、私も見たことあります。今回、よし子が子どもたちとドッジボールをするシーンは、異様に長く編集してるんですけど、シナリオの段階でも撮影の段階でも、あんなに長く見せる予定はまったくなかったんですよ。撮ってきた映像を見て、「長く見せよう」と決めてできあがったシーンなんです。 茅野あの長さを見せられることで、よし子の生き様みたいなものが迫ってきました。めっちゃ本気で闘って、最後はひとり、っていう。 安井あそこは、負けちゃうのがよかったですね。 茅野負けちゃってるのに、まったく落ち込んでないっていう。 白川そのあとの、子どもとのやりとりも、すっげぇおもしろかった。 茅野この映画の感想、不思議なくらいみんな違ったんですけど、「もう一度観たい」「観るたびに、違う発見がある」っていうのは共通してたんですよね。 横浜あ、それはうれしいですね。 茅野あと、観る側のコンディションによっても、感想が変ってくる。 横浜映画って、そういうものですよね。「あ、今は、この映画観れない気分」とか…。この映画は、1個のイメージでとらえられるものじゃなくて、いろんな感じ方ができる映画にしたかったっていうのはあります。「心にスポッと、はまらせてたまるか」みたいな。「観た人を不機嫌にしてもいいや」くらいの。 本堂僕は、「続きが観たい」と思いましたね。退屈な映画って、途中で時計見ちゃうけど、この映画は、まったくそれがなかった。「あ、終わった」って感じ。 安井ひと言じゃ説明できないこの映画を、あえて表現するなら? 横浜何回観ても、自分でもまだどういう映画なのか分かってるつもりでも分かんないっていうか。本当に、観るたびに分かんなくなる映画だと思っていて。ただ、不気味な映画だと思ってます。そういう体験がしたい方は、ぜひ観ていただきたいですね。 白川「おしゃれ映画」と思って観た人が、「なんか、ピンとこんかった」って言ったら、それはそれで「よし!」って思う(笑)。 横浜観る人の想像力をかきたてる作品を作りたいですね。全部説明するんじゃなくて。 白川で、さっこ、映画作って、どうだった? 横浜すっごいやり残したことがあって、悔しくて、またやりたくってしょうがない。映画やってるときって、浮世離れしててさぁ。朝早くから夜遅くまでやってるのに、1日が経つのがすっごく早くて。映画のことしか考えてなくて。なかなかできない体験だったよ。 白川よかったねー。 ※『音遊びの会』:即興演奏を得意とする音楽家、知的に障害のある人、音楽療法家が、神戸大学音楽棟に集まって始まったプロジェクト。 |
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■3月22日(土)~3月28日(金)シネマ・クレール丸の内にて上映
※初日には横浜監督の舞台挨拶あり
イベント開催!!
『横浜監督を、よってたかって囲む会』
日にち: 3月22日(土)23:00~
会場: 『ahai』(岡山市中山下1-7-1/℡086-232-3312)
料金: 500円(ドリンク+スウィーツ)
『ジャーマン+雨』をシネマ・クレール丸の内で鑑賞後、監督を囲んでカフェトークを開催。
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★本イベントと初日の上映に、5名様をご招待!(提供:シネマ・クレール/ahai)
応募は終了しました。(締め切り 3月7日12:00)